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北の浜辺に、食卓に

北海道の日本海岸にいち早く、春を運んでくるのが"春告魚"とも呼ばれるニシン。今年は、半世紀ぶりに羽幌町・焼尻島にニシンの大群が押し寄せ、産卵行動のために海が乳白色に染まる「群来(くき)」が見られたことがニュースをにぎわせました。また、ほかの地域でも「近年にない豊漁」と、浜が活気づいています。

北海道が蝦夷(えぞ)地と呼ばれた松江藩の時代から昭和30年前後まで、北の浜辺に押し寄せたニシンは、春とともに巨万の富を運んできました。百万石時代と呼ばれていた明治30年(1897)には、史上最高の97万tの漁獲を記録。ニシンがたくさん獲れた日本海沿岸の浜辺、千石場所には網元の親方衆が贅を尽くして建てた「ニシン御殿」や「番屋」が軒を連ねていました。

「番屋」は、網元である親方と一時雇いの漁夫が寝泊りする大型の漁家建築のこと。春の限られた時期に大量の人手を要したニシン漁は、この番屋によって支えられていました。ニシンの水揚げが盛んだった日本海沿岸には、こうしたニシンが残した名所や網元、商人たちの栄華の忘れ形見が点在しています。春一番、ニシンが運んだ壮大なドラマをたずねて、北の浜辺のまちを訪ねてみてはいかがでしょうか。

道内の主な関連史跡・名所

今月の歳時記
よいち水産博物館 余市町
余市駅から車で10分。かつてニシンが押し寄せた余市湾を見下ろすモイレ山山頂に建っています。別名「ニシン博物館」とも呼ばれる館内には、余市が千石場所として栄えた頃、実際に使われていたさまざまな道具や資料が展示されています。ニシン漁が最も盛んだった大正8年の漁村の様子を再現したジオラマもあり、その繁栄をしのぶことができます。

■よいち水産博物館/Tel.(0135)22‐6187





今月の歳時記
旧下余市運上家(きゅうしもよいちうんじょうや)

余市町
嘉永6年(1853)に建てられ、昭和57年に解体・復元された歴史的建造物です。内部には、当時の繁栄を物語る民具や漁具を展示。この運上家は、江戸時代に蝦夷地(現在の北海道)を支配していた松前藩の出先機関として造られ、ニシンをはじめとする海産物の交易や公文書の取り扱い、難破船の救助などを行っていました。道内にはこのような運上家が10数ヵ所あったといわれていますが、現存するのはここだけ。近世北海道の歴史や、江戸時代の蝦夷地経営を知る貴重な資料として、国の重要文化財にも指定されています。

■旧下余市運上家/Tel.(0135)23‐5915



今月の歳時記
横山家&旧中村家 江差町
江戸中期から明治まで、漁業・商業・廻船業を営んでいた横山家の建物が大切に保存されています。現在の建物は、天明6年(1786)に建てられたもので、道南で唯一現存する江戸時代の建築であり、道内最古で唯一の京風建築です。建物の中には、本州との交易に使われた北前船で運ばれた豪壮な調度品や生活用具も並び、往時の繁栄ぶりがしのばれます。
横山家の近くには、100年以上前に近江商人によって建てられた当時の問屋建築を代表する土蔵造りの「旧中村家」の建物も保存され、内部を見学することができます。
※4月末まで「横山家」の見学は、予約が必要です。

■江差観光協会/Tel.(01395)2‐4815



旧笹浪家住宅、土蔵 上ノ国町
笹浪家は、上ノ国で古くからニシン漁などを行ってきた旧家のひとつ。代々、久兵衛を名乗り、初代は享保年間に能登国笹浪村から松前福山を経て、上ノ国に移り住んだといわれています。
置き石屋根が往時のたたずまいをしのばせる住宅は、19世紀前期に5代目が建てたものと伝えられ、築後150年の時を経てた平成2年に上ノ国町に寄贈されました。平成4年には、国の重要文化財にも指定されています。

■上ノ国観光協会/Tel.(01395)5‐2121